ビル・アトキンソン氏の記事

今月のMac Fanの記事にLisa(初代Mac OSの原型)やHyperCard(画像や音声を貼付けられるメモツール)の開発者として有名なビル・アトキンソン氏の記事が掲載されていると友人から紹介され、私も購入して読んでみました。20年前に発売されたMacintoshにはすでに現在と同じGUIの概念が実現しているわけですが、その初代Mac OSを開発したメインアーキテクトが彼であります。


記事の内容としてはユーザインタフェーステストの話が興味深かったです。彼はユーザインタフェースをどのようにするのかを決定するのは、デザイナでもプログラマでもなくユーザであるという考えを持っており「ユーザテスティングが重要だ」と述べています。ここまでは、まあ(現代では)当たり前の話なのですが、ここからの話がなかなか面白いです。Lisaの開発では、ボランティアのユーザに開発途中のLisaを自由に触ってもらい、画面とそのユーザの表情の両方を撮影して後で分析するという手法を取っていたそう。その理由は「そのユーザたちが眉を曇らせたら、そのインタフェースは誤りということ。デザイナーよりもユーザを信用することが大切だ」とのこと。現在のアプリケーション開発にも応用できる強力なユーザビリティテストですね。


現在は技術者ではなく写真家として活躍しているそうです。付録のインタビュー映像の中で「Macと写真の共通点は何か?」という質問に、「Macも写真もアーティスティックな表現形態の一種であり、また同時にパーソナルなものである」と答えていたのが印象深かったです。

エンジニアリングの究極的な目標のひとつとして、「快適なユーザ体験のデザイン」があると私は考えています。20年以上前からそういった思想の技術者が居て、しかも革命的なツールをいくつも開発しているという話を聴くと、やはり勇気が湧いてきますね。