ガリレオの指 〜現代科学を動かす10大理論


「進化論」「DNA」「エネルギー論」「エントロピー論」「原子論」「対称性」「量子論」「宇宙論」「時空論」そして「数理論理」


現代科学の根幹を成す10個の「深遠なアイディア」を通して、理性や知識の本質とは何かを問いかけてくる科学読本です。タイトルである「ガリレオの指」とは、権威や内観にとらわれることなく、検証可能な実験観察技法により世界の本質を捕まえようと試みたガリレオの手法を暗示するものであり、現代科学のアプローチの象徴として描かれています。


この本が他の科学本と一線を画するのは、科学理論を説明する際に、その理論が確立するまでに「誤った理論」が幾度となく提起され、そしてそれら理論がいかに反証されてきたのかというプロセスにまで言及している点にあります。科学者が実験観察による仮説を立て、それを他の科学者が反証し、さらに新たな理論が構築される様子は、まるでノンフィクションの第一級ミステリーを読んでいる感覚を得られます。


例えば、アリストテレスは世界の成り立ちについて、地の球を中心として、水の球、火の球、そして天の球が入れ子状になっているというモデルを提唱し、土や水や火や空気はそれぞれの球に属するものだと考えたそうです。それゆえに、土を上に投げても地面に落ちるし、火や空気は上に向かうということを説明したとのことです。これは、現在の我々から見たら明らかに間違っていることではありますが、ガリレオニュートンが運動の法則を提唱するまでの2000年間信じられていた概念でもあるそうです。


そして、そのガリレオニュートンの理論さえも、熱の問題や原子の問題を解くには不十分であり、次々と新たな理論が展開されます。ガリレオニュートンのアイディアもまた仮説であり、次なる仮説の土台となる、その繰り返しを通じて科学が進歩する様子を、本書は克明に描いています。


さまざまな科学者が様々な仮説を生み出す様は、読者に多様な視点を与えることでしょう。現代科学を俯瞰しつつ、科学の本質について再考する良書だと思います。


これから科学を学ぼうとしている人、もう一度科学を学び直したい人には特におすすめです:)